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最近『SDGs』という言葉を耳にされた方は多いのではないでしょうか。
SDGsとはSustainable Development Goalsの略で、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されている2016年から2030年までの国際目標です。通称「グローバル・ゴールズ」は、貧困に終止符を打ち、地球を保護し、すべての人が平和と豊かさを享受できるようにすることを目指す普遍的な行動を呼びかけています。
具体的には、持続可能な世界を実現するための17のゴール(図表1参照)・169のターゲットから構成されています。SDGsは発展途上国のみならず、先進国自身が取り組む普遍的なものであり、日本では外務省を中心に積極的に取り組んでいます。
昨年9月23日にニューヨークで開かれた「温暖化対策サミット」において、スウェーデンの16歳の少女、グレタ・トゥーンベリさんが、気候変動が緊急事態にあると強烈にアピールしました。彼女は、大人たちに計画するだけではなく実効性を伴う本気の対策を要求し、若者たちを中心にして世界中に賛同の波が広がっています。
その背景にあるのは、昨年秋に関東地方や甲信地方、東北地方などに甚大な被害をもたらした台風でもわかるように、温暖化がこれまで考えられた以上に急速に進み、世界的に人々の生活の持続可能性が深刻な状態になってきているという事実です。
昨年の5月に実施された日本経済新聞社のSDGs経営調査によりますと、6割の企業が中長期経営計画にSDGsを織り込んでいると回答しており、環境や社会への配慮、企業統治の向上という概念の「ESG」とともに自社の事業や社会貢献活動に関連付け、経営指針として採用する企業が増えています。例えばビール業界大手のキリンホールディングスは、飲酒マナーの啓発を目指して「スロードリンク」というスローガンに掲げています。売上が減ったとしても、アルコールはゆっくりほどよい量を飲むのが社会全体にとってよいという考えです。
世界全体がSDGsの達成を目指す中、これを無視して事業活動を行うことは、企業の持続可能性を揺るがす「リスク」をもたらすような雰囲気になってきています。具体的には、企業の評判が下がる、規制が強化された際に規制に抵触してしまう、消費者が商品を購入してくれなくなる、といったものがあります。
医療機関でも既にSDGsに取り組まれているところはあると思います。なかでも取組みに積極的な群馬県高崎市内所在の産科婦人科舘出張(たてでばり)佐藤病院は、2018年12月21日に第2回ジャパンSDGsアワード特別賞を受賞しました。ちなみにジャパンSDGsアワードは、持続可能な開発目標達成に向けた企業・団体等の取組を促し、オールジャパンの取組を推進するために2017年に外務省が創設したものです。
医療機関では初めての受賞であり、その選出理由は、全ての女性が健康である社会づくりに、女性の生涯にわたる専門病院として貢献しており、取組み内容は国内外のロールモデルになり得ることからとのことです(図表2参照)。同院のWebsiteには、自院の理念・基本方針のもと、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献する活動に取り組み、次世代が健康に活躍できる社会の実現を目指すことが掲載されています。
同院は江戸時代から12代続いており、時代に合わせた安心・安全な医療と健康増進サービス等を提供しています。「生涯を通じた女性の健康支援」として女性アスリートへのサポートや、「女性の健康教育」としてプレコンセプションケア(妊娠前健康管理)の実践と啓発など、産婦人科を主軸に健康な次世代の創出とライフサイクル全般に通じた女性包括支援を実施しています。
より具体的には外務省の資料によりますと、障がいを持つ子どもへの支援基金との連携や障がい者雇用の実施、性犯罪支援者ワンストップ窓口の設置など、地域共生社会の実現に貢献しています。また地元企業や大学、NPO法人と連携して女性健康セミナーなどを実施するなど、外部機関との連携活動を通じて、社会、環境、経済に配慮した病院運営を行っています。その他にも患者を対象にアンケートをとり、毎月集計・評価し、結果のフィードバックを職員に実施することで、経営の透明性の維持と説明責任を果たしています。
もともと日本には、会社が世のため人のために存在するという考え方、近江商人の「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」の「三方よし」の精神や渋沢栄一の道徳経済合一説*にもあるように、当たり前の考え方として脈々と受け継がれています。世界全体の会社のうち、200年以上持続している会社の約半分が日本にあるという事実が、これを証明しているのかもしれません。
医療サービスは、地域共生社会、地域包括ケアシステムに不可欠な地域のインフラストラクチャーであり、当然、持続可能性が高いことが期待されています。地域密着型の医療機関として、地域住民のため、持続ある社会システムのために、自院の経営にSDGsの考え方を積極的に取り入れ、外部にアピールすることを検討されてはいかがでしょうか。
*企業の目的が利潤の追求にあるとしても、その根底には道徳が必要であり、国ないしは人類全体の繁栄に対して責任を持たなければならないという説(公益財団法人渋沢栄一記念財団Websiteより)
図表1 持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)
目標1 あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ 目標2 飢餓をゼロに 目標3 あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する 目標4 すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する 目標5 ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る 目標6 すべての人々に水と衛生へのアクセスを確保する 目標7 手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する 目標8 すべての人々のための包摂的かつ持続可能な経済成長、雇用およびディーセント・ワークを推進する 目標9 レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る 目標10 国内および国家間の不平等を是正する 目標11 都市を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする 目標12 持続可能な消費と生産のパターンを確保する 目標13 気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る 目標14 海洋と海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する 目標15 森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る 目標16 公正、平和かつ包摂的な社会を推進する 目標17 持続可能な開発に向けてグローバル・パートナーシップを活性化する |
出典:国際連合広報センター Websiteより
図表2 産科婦人科舘出張 佐藤病院のSDGsの取組内容
出典:産科婦人科舘出張 佐藤病院Websiteより
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