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2018年4月に新設されたいわゆる「オンライン診療料」の届出をしている施設は約15%、そのうちオンライン診療の実績があるのは約16%、つまり全体の約2.4%にしか普及していません。では海外のオンライン診療の状況はどのようになっているのでしょうか?
海外の取組事例について、2018年2月8日開催の厚生労働省「情報通信機器を用いた診療に関するガイドライン作成検討会」に提出された資料に詳細が掲載されています。
まず米国については、国土が広大なため、医療施設や医師へのアクセスが限定される地域が一定数存在しているため、早い段階から遠隔診療の整備が行われてきました。1993年に創設されたアメリカ遠隔医療学会によれば、米国には遠隔医療を提供するネットワークが200ほどあり、3,500か所の施設を通して図表1のような遠隔診療サービスが提供されています。一方で遠隔医療の普及には様々な課題が存在しています。保健福祉省が2016年に議会に提出した報告書では、公的保険の支払いの改革や州間のライセンスの障壁、地方の病院への高速ブロードバンド環境の整備などが主要な課題に挙げられています。
次に欧州における遠隔医療は、糖尿病管理、プライマリヘルスケア、精神医学、遺伝学、放射線学、病理学、心臓学などを含む複数の分野で利用されており、2015年の世界の地域別市場規模の比較では、欧州は北米に次ぐ第2位となっています。欧州の遠隔医療市場は、2010年の31億ドルから2011年には48億ドルに拡大しており、2019年にはその3倍に近い126億ドルとなることが見込まれています。
資料には、遠隔医療を提供する企業の事例として2社が取り上げられています。1社目はイギリスを拠点とし、アイルランドでも活動する企業で、近く東アフリカでもサービスを提供する見通しです。提供しているサービスは、総合診療医とのチャット(スマートフォンなどを使用して総合診療医とチャットができ、具合が悪い時に何をすべきかについてアドバイスを求めることができる。チャットの予約は年中無休で24時間可能)、総合診療医とのビデオ通話(自身のスマートフォンなどから24時間年中無休で通話可能)、処方箋の配送(サービス処方箋を翌日、もしくは最短で同日に自宅や職場、地元の薬局に配送)です。
2社目もイギリスで遠隔医療のサービスを展開する企業で、アプリやウェブサイトを使って総合診療医と対面で話をし、医学的アドバイスや処方箋、紹介状、診断書が提供されます。肌の状態やメンタルヘルス、関節痛、アレルギー、脱毛など様々な分野での診断を行います。
一方でアジアの状況をみると、国立研究開発法人科学技術振興機構の研究開発戦略センターのウェブサイトによれば、中国福建省にて世界初となる5G(第5世代移動通信システム:超高速、超低遅延、多数同時接続)通信環境下における遠隔操作外科手術テスト(豚が対象)が成功したとのことです。福建省の大学病院長は、5G技術によってより多くの高品質医療資源が過疎地に迅速に普及し、患者は長距離移動しなくても省レベル、国レベル、さらには世界レベルの専門家の診療を受けられるようになるだろうと説明しています。
インドは医師の数が圧倒的に少なく、人口10万人あたりの医師数は約80人と日本の3分の1といわれています。医師不足という状況を解決するために、日本のエムファインというベンチャー企業が現地でスマートフォン診療のサービスを提供しています。日経新聞の記事によれば、利用者は体調や症状をアプリに入力し自らの状態を伝えると、症状に対応可能な医師の一覧が表示され、その場で診療を受けられます。医師とはビデオや写真、音声、テキストでやり取りし、診断後に必要に応じて処方箋が発行されます。診療後もアプリによるやりとりによる継続的なフォローアップもされ、利用者は自らの病歴の管理がやりやすくなります。同社ではAI(人工知能)をフル活用し、利用者の問診情報に基づいて病気を予測し、医師に病名候補を表示したり、追加の問診内容や適切な薬の候補を提示したりもします。AIの精度を高めるために世界のメディカルジャーナルや関連記事を数百万の単位で読み込み、機械学習をさせています。
日本のオンライン診療が亀の歩みで進む一方で、面積が広く人口密度の低い地域を抱える国や医療資源の乏しい国においては、AIや5Gを活用した医療分野のイノベーションが急速に進んでいくでしょう。
ディープラーニングの活用で翻訳ソフトの精度は目覚ましく向上しています。言語の壁がなくなれば、日本国内で海外の医療サービスを公的保険外で利用する時代がくるかもしれません。例えば、かかりつけ医機能はAIと海外の総合診療専門医に任せ、手術や入院の必要が生じた場合は、国際的医療施設評価機関であるJCI (Joint Commission International)認証取得している日本国内の医療機関の紹介を受け、手術は5Gを利用して世界の名医にロボット手術を依頼するようなサービス・パッケージが提供されれば、利用する人も出てくるのではないでしょうか。
遠隔診療の米保健福祉省による分類
生中継動画 (live video) |
視聴覚通信技術を用い、患者・介護者・プロバイダーのいずれかとプロバイダーとの間で行われる生中継で双方向のやり取り。ビデオ会議は、遠隔医療の一環として以前からプロバイダー同士の間で行われていたが、現在は多くの企業が、患者と医師が直接やり取りをするサービスを提供している。 |
ストア・アンド・フォワード (Store-and-forward) |
X線画像・写真などのデジタル画像や動画を、安全な電子通信システムを用いて伝送する。リアルタイムの診察と比べ、この方法を使えば既に収集されたデータを用いることができる。通常、診断情報は、患者のケアの場で収集され、別の場所にいる専門家の元に送られる。画像が送信されてから分析が行われるまでにタイムラグがある。 |
遠隔医療患者 モニタリング (Remote patient monitoring) |
個人の健康・医療データがある場所で収集され、別の場所にいるプロバイダーの元に送られる。主に生活習慣病の管理を行うのに利用されており、ホルター心電計などの機器を使用し、血圧や血中酸素濃度といった情報を医師の元に送る。 |
モバイルヘルス (mHealth)
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健康を促進することを目的に作成されたスマートフォンのアプリ。 病気にかかる可能性が警告された場合に健康的な行動を取るよう促すメッセージを送るものや、患者が自身のケア計画に従えるようにリマインダーを送るものなどがある。スマートフォンのカメラやマイクロフォン、その他のセンサーを使ってバイタルサインをとらえ、アプリにインプットしたり、遠隔医療患者モニタリングへの橋渡しをしたりすることもできる。 |
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