IMC株式会社  池田医業経営研究所

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ソーシャルメディアの活用

広告業界最大手の電通がまとめた2018年の「日本の広告費」によりますと、インターネット広告は17年比16.5%増の17589億円。自動で広告を配信する「運用型広告」やスマートフォン向けの動画広告が伸び、5年連続で2桁成長、2019年にはいよいよネット広告が地上波テレビ広告を初めて逆転する見通しのようです。

これまでインターネットを活用したマーケティング手段の進化について紹介してきましたが、インターネットやスマートフォンの普及により、自らホームページやブログ、ソーシャル・ネットワーキング・サービスなど、いわゆるソーシャルメディアを活用することで、情報発信が安価に簡単にできるようになりました。ただ一方でリスクも高まっています。

最近、非正規社員がスマートフォンを使用して営業妨害になるような内容の動画を拡散し、風評被害が生じているというニュースが頻繁に報じられています。テレビやインターネットのニュースにて取り上げられているのは氷山の一角であり、自分のところでも同様の問題が発生しないかと悩みを抱えている経営者の方は多いと想像します。

医療機関では、飲食業のようないわゆる“バイトテロ”のようなリスクが生じる可能性は低いですが、要配慮個人情報である患者情報などの漏えい、ブラック・パワハラ・セクハラ等の労務問題の内部告発や内部情報暴露など、インターネット上での不都合な情報拡散のリスクはあります。そのため医療機関経営者は、一般の企業と同様に情報に関わるリスクマネジメントの対策を講じておく必要性があるでしょう。

 

リスクマネジメントとは、一般的に経営に悪影響を与える様々なリスクを把握し、合理的に回避・極小化するための経営管理手法のことです。地震や津波といった自然災害などのリスクに対しては、事業継続計画(Business continuity planning, BCP)を立案し対策を講じている病院は増えてきています。一方で組織が情報セキュリティを保つための対策や、インターネット上の風評被害や炎上などのソーシャル時代のリスクへの対策は充分とは言えません。

ソーシャルメディアに悪意のある書き込みなどが発見されたときは、誹謗中傷の被害が拡大するのを防ぐために、できるだけ早めの処置をすることが必須となります。瞬く間に広範囲にわたって伝播し、さらには拡大解釈や曲解されたりして短期的・直接的な被害のみならず、医療機関のブランドイメージが低下することで被害が長期化する危険性もあります。ソーシャルメディアによる脅威を軽視せず、院内ルールの策定や職員への教育などの対策を講じる必要があります。

最初に取り組むべき対策は、院内の規程の整備や見直しです。在職中の職員は、信義則上、労働契約に基づく付随義務として、使用者の正当な利益を不当に侵害しない義務を負うものと考えられており、就業規則の規定や個別の秘密保持契約がなくても、従業員の秘密保持義務は発生します。

ただ保護すべき秘密の範囲などが曖昧になりがちですので、職員の自覚を促す効果も考慮して個人単位で秘密保持契約を締結することが考えられます。職員の退職後についても継続して秘密保持義務を履行させるために、就業規則であらかじめ規定しておく方法もありますが、退職時に秘密保持契約を締結しておけばさらに安心です。少なくとも職員の退職時には、秘密保持に関する誓約書を提出してもらうなどした方が良いでしょう。また職員が万が一、規程違反した場合の対応も定めておく必要があります。例えば、就業規則の懲戒事由として明記し、掲載内容削除の指示を業務命令としてできるようにすることなどです。

 

医療機関としてフェイスブックページを作成したり、ツイッターなどで積極的に発信したりしている一部の医療機関は、ソーシャルメディアガイドラインを定めホームページに開示しています。ガイドラインの内容は、目的やソーシャルメディアの定義、想定されるリスク、運用ルールなどです。職員がソーシャルメディアを利用する場合、一個人の立場と医療機関の職員の立場がありますので、各々の場合について定める必要があります。表1に、ソーシャルメディアガイドラインを作成する際の重要なポイントを整理していますので参考にしてください。留意すべきことは、ガイドラインが禁止事項の一覧になってしまい、職員がソーシャルメディアの活用を委縮してしまうことです。禁止表現よりも、どのようにすれば問題が生じないか、アドバイスを送るような表現の方が良いでしょう。また万が一、問題が発生したときに速やかに対処できるように、具体的な対処方法を定めておく必要があります。

自院ではソーシャルメディアを活用していないから関係ないと考えられている医療機関についても、ソーシャルメディアは表2のように多種多様になってきており、職員がいずれかのサービスを個人的に利用している可能性は高いのではないでしょうか。備えあれば憂いなしですので、職員に秘密保持の重要性やソーシャルメディア利用にあたっての注意点などの啓発をされることをお奨めします。

 

表1 「ソーシャルメディアガイドライン」を作成する際の重要なポイント

1. ガイドラインの策定目的および適用範囲をわかりやすくはっきりと表記

2. 法令、就業規則等の規程、モラル、マナー等の順守

3. 個人の尊重

4. 誹謗中傷や差別的発言の禁止

5. 正確な情報の発信を促す (ウソをついたりデマを流したりするような行為を制する)

6. 著作権や肖像権等の権利を守り、情報の適切な利活用を促す

7. 機密情報や特許で守られた情報の保護

8. 情報は、一度発言・発信したら完全に取り消す(削除する)ことができないことに留意

9. 発言や発信が、自分自身や他者の将来に重大な影響を及ぼす可能性があることに留意

10. 困ったり迷ったりした際は独断せず、助言を求める

 

出典:安心ネットづくり促進協議会ウェブサイトの内容を筆者が一部改変

 

表2 主なソーシャルメディアの種類

種類

代表的な例

機 能

ブログ
サイト

FC2Amebalivedoor、 Bloggerはてな

インターネット上の日記。日常の出来事や興味のあることなどの情報発信を行う。

SNS
サイト

mixiFacebookGREE、モバゲー 等

インターネット上で人と人が繋がり、コミュニケーションすることが目的のサービス。

動画系
サイト

YouTube、ニコニコ動画、USTREAM 等

動画を投稿、視聴できるサービス。

ミニブログ
サイト

TwitterInstagram 等

ブログサービスの一種で、文字数制限のあるメッセージ投稿サイト。つぶやきサイトと言われる。

電子掲示板

2ちゃんねる 等

インターネット上につくられた一種の掲示板。

メッセージング・アプリ

LINEMessengerFB)、

WhatsApp Messenger

リアルタイムでテキストの送受信を11またはグループで行える。一部は音声通話機能もあり。