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対象地域:全国
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10月6日、7日に東京で開催された全日本病院学会において、公益財団法人日本医療機能評価機構が病院の支援として「患者満足度・職員やりがい度活用支援」を2018年度から本格的に開始しているとの話を聴きました。患者満足度調査の実施は、図表1の調査項目をみてわかるように、かなり労力が必要ですが、患者さんとの双方向のコミュニケーションを図る機会、自院が気づいていない問題を発見し解決できる機会ですので、検討されてみてはいかがでしょうか。
図表1 日本医療機能評価機構の外来患者満足度調査項目
1. ○○○○(病院名)を親しい方にもすすめようと思いますか?(総合評価)※ 2. 診察までの待ち時間 3. 診察時間 4. 医師による診療・治療内容 5. 医師との対話 6. 看護師 7. 事務職員 8. その他のスタッフの対応 9. 痛みや症状を和らげる対応 10. 精神的なケア 11. プライバシー保護の対応 12. 薬剤師 13 . 介護職員 14. 看護助手 15. 検査職員 16. リハビリ職員 17. 相談員 18. 栄養士・調理師 19. 清掃職員 20. 安全面への配慮 21. ニーズや価値観の配慮 22. 人格や尊厳への配慮 23. 要望や苦情への対応 24. 身の回りのお世話 25. 受付手続き 26. 会計手続き 27. 入院時の説明・手続き 28. 退院時の説明・手続き 29. 手術 30. 検査 31. リハビリテーションの成果 32. 職員間の連携 33. 他施設との連携 34. 料金負担 35. 職員の接遇 36. 行事やレクリエーション 37. 外出や散歩 38. 建物や設備 39. 備品類 40. 清掃の状況 41. トイレ 42. 入浴 43. 食堂 44. 売店 45. 案内表示や掲示物 46. 交通アクセス 47. 駐車場 48. 送迎サービス 49. 日常生活支援 50. 家族への情報提供 |
※:固定項目 太字:他院とのベンチマーク対象項目
出所:公益財団法人日本医療機能評価機構のWebsite
(注記)入院患者満足度調査及び職員満足度調査項目は、同機構Websiteをご覧ください
患者満足度の調査結果は、医療機関間で大きな差は出てきません。なぜならそもそも調査対象の患者は、当該医療機関を自らが複数の中から選択しているわけなので、程度の差はあれ大多数の患者は「提供されたサービスにそれなりに満足」しており、「医師やスタッフに感謝」しています。そのため他院との比較は自院の職員の改善意欲を高める動機付けに活用できるような場合を除けば、自院内で継続的に調査を実施して経過観察に用いるのが良いでしょう。1年もしくは半年ごとに同じ調査方法で実施して推移を見守ると、職員の入れ替わりや配置転換、運営方法の変更など、医療機関の施策が満足度の変化に反映しますので、組織面・運営面で参考にできます。
ただ注意しないといけないのは、患者満足度調査を実施すること自体が目的になってしまうことです。定期的に実施する調査の場合、どうしても各項目のスコアの前回実施時との比較に目が行くため、前回と比較して「上がった」「下がった」という事実に一喜一憂してしまい、調査を実施し集計を繰り返すという単なる定型的な作業に陥いりがちです。
一般企業において顧客満足度は、「××に対して、どの程度満足しているか?」を計測する指標であり、サービスの品質を数値化するものとして利用されていますが、この"満足"の包含する範囲はかなり"あいまい"です。アンケートで「満足」という評価を下した顧客であっても、必ずしもお得意様になって業績向上に貢献してくれるとは限りません。企業が顧客満足度の向上を実践しても、目に見える形で業績向上につなげるには相応の時間が必要とされます。そこで業績向上につながる指標として、NPS(「Net Promoter Score(ネット・プロモーター・スコア)」の略)という顧客満足度に代わる新たな指標を導入する企業が増えているようです。NPSは「推奨者正味比率」とも呼ばれ、これまで計測することが難しかった顧客ロイヤルティ(顧客の長期的な忠誠心)を数値化する指標です。NPSは「すすめたいと思いますか?」という質問を通して、「他者にすすめる」という未来の具体的な行動を点数化するため、今後の収益の動向に連動しやすいと考えられています。
この指標は2003年にアメリカの大手コンサルティング会社であるベイン・アンド・カンパニー社のフレドリック・F・ライクヘルド氏が、ハーバード・ビジネス・レビューで発表しました。著書『ネット・プロモーター経営』の中で、NPS開発に取り組み始めたきっかけとして、「(アメリカの自動車メーカー最大手の)ゼネラル・モーターズは2005年春に、顧客満足度調査最大手であるJDパワー・アンド・アソシエイツから数々の賞を受けたにもかかわらず、ビジネス面では市場シェアが低下し、社債格付けが投資不適格に引き下げられた」出来事をあげています。顧客満足度を高めても、必ずしも顧客から自社の製品が選ばれて売上増加に繋がるわけではなかったということです。
NPSを計測するためには、「あなたは○○を親しい友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?」と質問し、0〜10点で評価してもらいます。○○には、企業や製品、サービス、ブランドなどが入ります。点数(推奨度)によって顧客を図表2のように「3つのグループ」に分類し、0〜6点を付けた人を「批判者」、7・8点を付けた人を「中立者」、9・10点を付けた人を「推奨者」とします。
NPSは、「推奨者」の割合(仮に60%)から「批判者」の割合(仮に20%)を引いた数値(60%-20%=40%)になります。推奨者が増えるほど、批判者が減るほど数値が高くなるように設計されています。
図表2 評価した点数による分類
点数 |
分類 |
具体的内容 |
9・10 |
推奨者(Promoter) |
熱心な顧客。自らが継続して購入(利用)するだけではなく、他者に対してサービスを勧める『推奨』の役割も担う。 |
7・8 |
中立者(Passive) |
満足はしているが、それ程まで熱狂的ではなく、競合他社が良い条件を出せば簡単になびきやすい顧客。 |
0~6 |
批判者(Detractor) |
何らかの不満を抱いている顧客。放置しておくと悪評を広められるリスクもある。 |
2018年9月21日の日経産業新聞掲載の株式会社アイ・エム・ジェイの調査によれば、NPS導入で得られた主な効果として、「顧客の声を聴く文化ができた」、「複数部署をまたいだ共通指標ができた」「社内でPDCAを回す体制が整った」「売り上げが上がった」などが挙げられています。医療機関・薬局においても約10%がNPSを導入しているようですので、次号以降で詳細を紹介することで考えています。