休業日:年末年始
対象地域:全国
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企業の顧客の声を聞く姿勢や仕組みについて紹介してきましたが、顧客や他のステークホルダーと一緒にマーケティングを行い、顧客の声を自社のサービス開発や販売促進活動に活かす取組を「共創マーケティング」といいます。
一般的なマーケティングでは、サービスを開発するときには、自社や調査会社の市場データなどをもとにターゲットを分析し、仮説を立てることが一般的です。しかしその場合、データの調査時期や調査方法によっては実際に企業の顧客となるターゲットと乖離が生じてしまうこともあります。
共創マーケティングは、サービスの開発やリニューアルの初期段階から顧客と直接交流することでニーズを汲み取り、一緒にサービスを創り上げていくところに特徴があります。またサービス提供後も顧客から継続的に意見をもらうことで質を高めていくことが可能です。顧客の声に答えて柔軟にサービスを改善することで、 顧客のサービスに対する「愛着心」や「思い入れ」を高めることもできます。
小林製薬のお客様相談室の「一生懸命応対」や営業や製造部門などの従業員に向けての『お客様の声を聴く会』の開催(1月号掲載)、マクドナルドの社長による顧客とのタウンミーティングや、顧客による店舗の抜き打ち検査や製造工場見学、スートフォンアプリによるアンケート収集(3月号掲載)、良品計画の「声ナビ」「顧客視点シート」「オブザベーション」などの独自の仕組みで顧客の声を社内に取り入れ、商品・サービスに反映する取組み(5月号掲載)などは、共創マーケティングと言えるでしょう。各社のマーケティング活動では、ソーシャルテクノロジー(インターネットを通じて利用される、不特定多数のユーザーが他のユーザーと繋がりを持ち、情報の発信・共有などのコミュニケーションを行うこと)を積極的に活用しています。この大きな変化の流れは「グランズウェル」と呼ばれており、企業のグランズウェルへの取組は、大きく挙げると5つあります(表1)。
表1 グランズウェル5つの戦略
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具体的な行動 |
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リサーチ |
耳を傾ける |
顧客の会話を分析する |
マーケティング |
話をする |
顧客の会話に参加する |
販売促進 |
活気づける |
熱心な顧客を応援して他の顧客の購買を促す |
サポート |
支援する |
顧客同士が助け合うようにする |
開発 |
統合する |
顧客のアイデアをビジネスに組み込む |
出所:池田紀行、山崎晴生(2014)「次世代共創マーケティング」SB Creativeを一部改変
共創マーケティングの手法は医療機関においても、取り入れられています。
福岡県所在の麻生飯塚病院は、 1918年開院の由緒ある病院です。地域の住民の厚い信頼のもとに発展し、42科1,048床、医師303名、看護師1,097名を含む2,439名(2017年8月1日現在)の職員が、“Patient First”を旗印に、“We Deliver The Best”~まごころ医療、まごころサービス、それが私達の目標です~を理念として最適医療を実践しています。同院のWebsiteの掲載内容に基づいて紹介します。
同院では、患者会が患者さんのこころの支えとなり、患者さん・ご家族・同院職員のつながりがより深まる場となることを願い、『患者会支援制度』を創っています。「会則の作成」や「事務局の設置」など、院内所定の要件を満たす患者会が、同院に登録・申請すれば「登録患者会」として、次のような支援をしています。
・活動支援金として年間3万円の補助金支給
・当院職員が患者会活動で日帰り旅行などをした場合は出張扱い
・病院内の会議室など、活動場所の提供
・当院職員や患者さんへの患者会の広報活動支援
「患者会を作りたいけれども、何から始めればよいかわからない」という患者さんや同院職員に対しては、独自の患者会設立マニュアルを提供しており、まさに至れり尽せりです。
例えば患者会のひとつ“菜の花会”は、ストーマ外来に事務局を置き手術を受けられた方々(同院以外で手術を受けられた方も可)とその家族と、外科及び泌尿器科の医師とストーマケアを専門とする看護師等で構成し、術後の人生を明るく前向きに過ごすことをめざして活動しています。術後の肉体的苦痛や精神的な悩みは、同憂者でなければ理解は難しいでしょうから、医療スタッフは患者等から直接話を聞くことで、治療方針の選択や術後ケアの提供などの点で参考にできるでしょう。
患者やその家族、職員を「支援する」ことで、関係者同士が助け合えるような場を作り、その場で患者や家族のニーズに「耳を傾けたり」、「話をしたり」します。話し合った際に出たアイデアを「統合し」、治療や看護のオペレーションに組み込んでいます。
また2010年3月に『地域医療サポーター制度』を創設し、継続しています。同制度は、住み慣れた地域が安心して医療を受けられる地域であり続けるために、自分の健康は自分で守る(病気の予防)、医療機関と上手に付き合うという2つの視点で自ら行動し、周囲の方々にもその知識を伝えてくださる方を『地域医療サポーター』として同院独自に認定する制度です。
『地域医療サポーター』にはレギュラー/ゴールド/プラチナの3種類があり、認定種類をレベルアップさせていけるような制度になっています。認定要件の詳細は、表2の通りです。地域医療のことを真剣に考えてくださる、幅広い年齢層の方々に参加いただくことで、2018年1月18日現在でレギュラー:917名、ゴールド:224名、プラチナ:15名の『地域医療サポーター』が誕生しています。講師は、医師をはじめ、保健師、ソーシャルワーカーなどの同院スタッフのほかに、地域の開業医の先生方や消防本部の救急救命士の方にも協力いただいているようです。
熱心な住民を応援して「活気づける」ことで、地域全体の意識の底上げをする非常に優れた方法です。
表2 麻生飯塚病院の『地域医療サポーター』認定要件
レギュラー |
l 年に5回開催している「地域医療サポーター養成講座」(以下、養成講座)を計3回受講された方 |
ゴールド |
l レギュラーの認定を受けている方 l レギュラーの認定を受けた後、養成講座を計3回受講された方 l 年に5回開催している「サポーターズミーティング」に計2回参加された方 |
プラチナ |
l ゴールドの認定を受けている方 l サポーター認定の有無に関わらず、講演※の企画・実施を計2回行った方 ※ 講演とは [1]飯塚病院から講師を派遣し開催する講演会の企画・実施 [2]自ら講師を務めて開催する5名以上の勉強会の企画・実施 |
出所:麻生飯塚病院Website
医療は地域密着型のサービスであり、医療機関で働いている皆さんも多くは地域の住民でもあります。住み慣れた地域をより良くするためにも、患者や住民を巻き込んだ「共創マーケティング」に取り組まれるのはいかがでしょうか。労は多いかもしれませんが、巡り巡って自院の経営にもプラスに働くと思います。
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